これは以前、inishie.com(工房いにしへの修復材料通販サイト) がアンティークの販売もやっておりまして、そのときにお客様からいただいた、アンティーク陶器の貫入のご相談に対して回答したものです。

ご参考になればと思って再度UPいたしました。(*^。^*)

●貫入とのつきあい方 ししまるさんの悩み

スージー・クーパーの Earthen Wareは、釉薬の部分に貫入(釉薬のひび)が入っていることがあります。全く入っていない物もあります。入っていなかったものに貫入が入ってくる・・・という問題もあります。

つまり入っていなかったものに貫入が目立つようになる。どうしてか??これはボディー(中心部のやわらかいところビスケット状になっています)と表面の釉薬(透明で堅いところ)の硬度・収縮率が一致していないことによります。

今回、「ししまるさん」よりご質問メールをいただきましたので、ご登場いただき、考えてみたいとおもいます。

質問 from ししまるさん

ハジメマシテ!
ホームページの前回のコラムを読ませていただきました。アンティーク初心者の私にはとても勉強になりました。 (食器を選ぶ点で気を付けること等。)
さて、先日(1ケ月前)やっとの思いでスージークーパーのドレスデンスプレイの紅茶カップを購入したのですが買ったときは完品だったにもかかわらず、1回使うと 2センチくらいの貫入がカップの内底に入り、それからも 2回、3回使う度にどんどん貫入が内にも外にも(絵柄部分) にもできてきて、染みになったりするので漂白したりで、もう泣きたい気分です。使い方、保存の仕方が何か間違っているのでしょうか?
私の使い方・・・普通に熱湯を注いで、カップを温め、それから再びお湯をそそいで紅茶パックをいれ、蓋をして、5分程置いて飲んでいます。飲み終えるとすぐ水で洗い(染みている場合は漂白剤を入れ30分程放置しています)、布巾で拭き、一晩放置してカップボードに保管しています。そのカップボードはガラスの戸があるので中にお水をいれた御猪口を一緒にいれて、保管しています。直射日光等は当たりません。
この方法で何かいけないところはありますか? お手入れ、保管方法で気をつける点をお教えください。貫入が見る度増えていっているのですごくすごく悲しいです。紅茶を飲むにも、染みになるんではないのか? と、いたたまれず、ゆったりとした気分でティータイムを楽しめません。
ご回答、よろしくお願いします。

回答 by CS

ホームページをみてくださってありがとうございます。もっともっと、内容が充実するようがんばりますので、これからもよろしくおねがいします。 さて・・・貫入のことですが、気になったのは、カップに直接、熱湯をそそぐということです。たしかに、最初にお湯をいれておくと、紅茶がさめないのでよいのですが、できたら、カップに直接、熱湯(100度)をそそぐのはさけられたほうがよいかとおもいます。スージーのアースンウェアはボーンチャイナ(白くて堅い)とちがって、2層から成っており、表面の堅い部分(釉薬、ガラス質)とビスケット状の柔らかい部分(ボディー、空気を含む。れんがみたいになってます。)、でできています。それを熱すると、(お湯をいれると、)その2層がそれぞれの割合で膨張するので(ボディーのがより膨張し、釉薬の部分はあまりしない)、釉薬の部分に亀裂(貫入)がはいってくるのです。ようするに、なるべく「熱」という刺激をあたえないようにしてやればいいわけで・・・。たとえば、ティーポットで紅茶をつくれば、その時点で、お湯の温度がさがりますし、ミルクティーにするつもりなら、カップに先にミルクをいれておくとか。(先にミルクをいれるイギリス人のひともけっこういるんですよ。)そうやって、なるべく、カップに熱をあたえないようにするのがよいかとおもいます。 シミは紅茶1杯のんだら、すぐついてしまいますか? わたしの体験では、貫入の入ったお皿をつかっていましたが、けっこう大丈夫でした。さすがに、紫キャベツをもったときには、しみになりましたが(笑)それでも、よーく、水洗いしたらとれました。それに、カップでも貫入のはいったものは、のんだらすぐ洗う。というようにして。 なるべくなら、漂白剤を使わないようにしたほうがいいです。もし、お使いになるのなら、その部分のみ、(漂白剤をはったたらいにカップをつけるのではなく、カップの内側に漂白剤をそそぐだけにするとか・・・。漂白剤も水でうすめたほうがよいかとおもいます。)そして、漂白したあとは、よく水洗いして、つけた時間だけ、水につけておく。(漂白剤を30分つけたら、水にも30分つける)それから、布巾でふいて・・・。というふうになります。 この点に関しては、程度にもよりますので、また、ご質問等ありましたら、メールください。 こんなこといってもなんですが・・・・、スージーのアースンウェアはお使いになるなら、(つかわないで、しまっておくならべつですが)ほとんどは、おそかれはやかれ貫入がはいってくる性質のものです。(経年貫入の問題) あまり、がっかりされないでくださいね・・・。でも、ししまるさんはスージーをとってもかわいがっているんですね。うれしいことです。 それでは。

それと、オーブン、電子レンジには絶対いれないでください。いっきに貫入がはいることもあります。

ディスプレイする場所も気をつけましょう。直射日光のあたるところはNGです。極端な乾燥、湿気もよくありません。

なんだか、ここまでくると・・・みなさんを必要以上に心配させてしまっているかもしれません・・・。「貫入を避けたい、つくりたくない」ならば・・・観賞用にするしかありません。

ただ、1930年代のアースンウエアの技術からいいますと、なにもしなくても、ほとんど貫入が入る運命だといってもいいでしょう。(※まだ入っていないものもありますが、それは今後も入らないことを保証するものではありません。)