私にとって大きな仕事というのは、東京都庭園美術館の「香水塔」でありますが、いままで経験した中でとんでもなく大変で大きな仕事だったと思う。

今だから言いますが・・・・私はこの仕事をして貧乏になりました(笑)

というのも、このレベルの仕事になると、他の仕事をすべてキャンセルして、香水塔の修復だけに自分を集中させなければいけないからです。

ただ、そうなってしまいますと首がまわりませんので、やはり通常の依頼もこなしつつ。でも最小限に。ということで。

 

多分、そのときにご依頼をされた方は、なんて無愛想な工房なんだろう・・・とおもったかもしれません。

 

普段はですね、実はお客さんに会うのが大好き!!なんです。

いろんな方がいて、会えるのはお受け渡しのときだけ。

その一瞬で、その人の思いや、人生や、生き方に触れられるというのは・・・・とても貴重なことだと思っております。

 

ただ、楽しいだけに、心がザワザワしちゃうのです。

ザワザワ防止に・・・・もしかすると、お断りしてしまったものも多いかもしれません。

 

 

香水塔はそのスケールゆえに(デカイ)失敗が許されない類の修復でした。

 

普段は、失敗してもやり直して、色質感を表現していく・・・・・・・というのがセオリーなんですが。

 

大きいものは失敗すると、やり直しが非常にやりにくいのです。ですから、一発勝負をかけなくてはならず→そのためには自分の持てる能力を最高のレベルにして取り組む。

ということで、取り組む前まで、ほんとうに、何も予定を入れない。

 

集中力を高めて、いっきに仕事する!!!

 

おかげで納期に間に合いました。。。

 

ただ、ビンボーにはなりました(笑)

 

とある写真家の人とギャラリーのレセプションでお会いしてお話したのですが、その方は重要文化財クラスの美術品を撮影するという仕事をこれからする・・・ということでした。

その方から、修復依頼品をお預かりしてかれこれ3年。。。

「ちょっとぉ~あれ、どうなってる?待ってるんだけどなあ。」

と、苦笑いのごあいさつ。

じつは、かくかくしかじか、香水塔のおかげで、すべてをささげ、貧乏になり、とにかく仕事を回さなければならなかったため、あなたさまの依頼品は後回しになってしまいました。と。 

 

その写真家のかたは、どうやらこれからビンボーになるようで。(そうです、その仕事に自分をすべてささげるために)

 

私の言い訳にものすごく共感してくださっておりました。

おっと、ビンボーになる前に完成させて、私の請求書の支払いだけはしてもらわねば(笑)

 

仕事には光と影がある・・・・。

 

ちょっと、お話してみました。