カラーフィルとはイギリス発祥の修復技法で、ここ30年で英国では主流となっています。色合わせと質感を合わせたパテをつくり、欠損部分に充填します。最大のメリットは修復範囲を最小限にとどめ、オリジナルを最大限にし、オリジナルを尊重した修復ができるということです。
カラーフィル以外の共直し・共継ぎ(色を合わせて修復する)では、修復部分とオリジナルの境目をなくすため、吹き付け(エアブラシ)を使用するために、ペイントが広範囲にわたり、オリジナルの部分を隠してしまいます。そうされたものは、もはや陶磁器ではなくなり「ペイント」になってしまいます。「全くわからない」ようにすることは可能ですが(ひどいものだと全面エアブラシを吹いているものもあります)オリジナルを損なうという意味では、残念なことです。
工房いにしへではできる限りカラーフィルでオリジナルを尊重した修復を目指しております。金継ぎと違って直した部分がオリジナルの色に近づけますので、自然な感じとなり、どのようなタイプの陶磁器とも違和感もなく修理・修復することができます。
カラーフィルのメインの材料は、合成樹脂、二酸化ケイ素、顔料となります。色を合わせるのには時間が必要です。白という色でも、よく見ると「グレーっぽい」「クリーム色っぽい」など色の傾向があります。さらに陶磁器は透ける・透けないもありますので、その部分もカラーフィルでは合わせていきます。
合成樹脂、これは接着剤としても使いますが、カラーフィルの材料としても使います。工房で使っているものは、市販のものとは違って、一般の人が使うには使いにくい仕様になっています。大きな違いは「タレ止め剤」は「効果促進剤」等(不純物が)入っていないので、純度が高いということ。また色を作る必要があるので「無色透明」でなくてはなりません。さらに硬化する時間が長いもの。すぐ固まってしまうと、色合わせする時間が確保できません。なによりも、文化財・美術品を修復するということをベースにしているので、修復で一番大切なことなのですが「可逆性」がなければいけません。
カラーフィルの方法ですが…言葉で表現しますと。
合成樹脂に固さを調整する「二酸化ケイ素」(エロジール/エアロジル)を加えて、扱いやすいパテを作る。
色を出すのに「顔料」を使います。岩絵の具(日本画で使う)ですと(岩絵の具→ざっくりいうと、色の素とガラス質のものを融解させ、板状にする、それを細かく砕き粒状にしていく。粒の大きさで号数が決まっている)スパチュラ(へら)で混ぜると、スパチュラの金属が削れてしまい、色が濁ってしまうので岩絵の具は使いません。
カラーフィルでは、ぱっと見の「色」と素地がもつ「透光性」の2つの要素を合わせてやる。
やはり、具体的な方法については、文章よりも見ていただいた方がわかりやすいと思います。Youtube動画がありますのでごらんくださいませ。
現在、Youtubeでいろいろな動画を紹介しております。鋭意編集中です。ぜひチャンネル登録よろしくお願いいたします。
カラーフィルをしてみたいという人に道具材料のご案内
DIY工房いにしへで販売しております。なかなか入手が難しいものも通販でお届けします。
陶磁器修復キット・プロ または べーシックがおすすめです。単品をご希望の方は、「カラーフィル」のカテゴリーをご覧くださいませ。キットをご購入いただいた方で、アイテムを追加していただくときの参考になるかとおもいますので、カラーフィルに必要なものを重要度別にリストアップしておきます。
<MUSTアイテム〉重要度★★★★★
・スパチュラ#47
・タイル 15cm角
・基本顔料セット(4色 : 白、青、黄、赤)
・(A)磁器用接着剤(使い切りタイプ 3本セット)
もしくは、(B)徳用 磁器用接着剤ボトル入り & 精密ばかり&ミニカップ
(A)1点、または(B)3点でご用意ください。
※精密はかりは0.01gまで測れるものがおすすめ
※徳用ボトルは約90回分(主&硬を1g:0.30gで混合した場合)入っています。
〈あると超便利〉重要度★★★★
・ルミラーシート
・顔料15色セットA
〈あれば便利〉重要度★★★
・コルク台(サイズいろいろあります。サイズは対象物による。湯呑みであればφ11がおすすめ)
・顔料スタンド
(補足)カラーフィルの仕上げに必要なもの
〈MUSTアイテム〉重要度★★★★★
・紙やすり #240
・布やすり 各番手(2400、3200、4000)
・グレイゲイト
〈あると超便利 おすすめ〉重要度★★★★
・替刃式スカルペル
・替刃 No.10/No.15
※No.10 だけでもOKです。